AIへの頼み方
専門知識はいりません。いちばんやさしい入り口から、AIに「ちゃんと伝える」技術まで。
差がつくのは才能ではありません。「意識して触った回数」です。この記事は、勉強会で使った資料をスライドごとに解説したものです。
今日お話しすること

いま、何が起きているか — 日常のAI、日本の現在地、そして私の意見
AIとの話し方 — 主観ではなく客観で。曖昧に頼むと平均点が返る
刻んで、確認する — 一発で終わらせない。発注と検収は人間の仕事
第1部 いま、何が起きているか

AIはもう日常の中に

貿易や商売なら、英文メールの下書きと翻訳、相場ニュースの要約、見積書のたたき台づくり。会社員なら、議事録の要約、企画書の構成案、エクセル関数の質問相手。家庭なら、冷蔵庫の残り物から献立、旅行の計画、子どもの勉強の解説役。
共通点はひとつ。「30分かかっていたことが、5分になる」ことです。
企業サービスにもAI活用!

「使ったことがない」と思っている方も、実は毎日使っています。スマホの文字の変換予測と写真の自動整理。通販の「おすすめ」と消費者購入予測。自動翻訳とカーナビの音声案内。どれもAIです。
問題は「使うかどうか」ではなく、「意識して使いこなすかどうか」に移っています。
個人のAI利用率

生成AIを使ったことがある個人の割合は、中国 81.2%、米国 68.8%、ドイツ 59.2% に対して、日本は 26.7% です。
日本も前年の 9.1% から約3倍に急増しました。それでも、いま始める人はまだ4人に1人の先行組です。
企業でも、同じ構図

生成AIの活用方針を定めている企業は、米国・ドイツ・中国が約9割に対して、日本は 49.7%。日本の大企業は約56%が策定済みですが、中小企業は約34%にとどまります。
約半数は方針すら決まっていません。だからこそ、個人が先に覚える価値があります。
出典:総務省「令和7年版 情報通信白書」(2025年7月・2024年度調査)
私見:使わない人が使う人に勝てるのは、今年が最後

利用率は急成長中です。来年には「使っていること」が当たり前の前提になる、と私は考えています。
第2部 AIとの話し方

曖昧に頼むと、平均点が返る

指示が曖昧なほど、AIはいちばん無難で適当な答えを選びます。
だから返ってくるのは「悪い答え」ではなく「平均点の答え」です。間違っていないぶん、気づきにくい。ここが厄介なところです。
大事なのは、論理と簡潔さ

AIを使いこなす力は、プログラミングなどの専門知識ではなく「国語」の力です。
必要なのは2つだけ。論理的な思考 — 何を、何のために、どんな条件で頼みたいのか、まず自分の頭の中を整理すること。そして簡潔に伝える言葉 — 整理した考えを、短く具体的に言葉にすること。長い説明より、正確なひとことです。
例文で比べてみます。
✕ こう頼むと伝わりません
最近うちの会社で新しいサービスを始めたんですけど、それについて何か記事っぽいものを書いてもらえたらなと思っていて、できれば読みやすくて、あとお客さんにも伝わるようなやつがいいです。
○ こう頼みます
新サービス『○○』の紹介ブログ記事を書いてください。 - 読者:30代の個人事業主 - 目的:無料トライアルへの申し込み - 文字数:800字程度 - 構成:課題提起 → サービス概要 → 導入メリット3つ → 申込への誘導
長さはほとんど変わりません。違うのは、条件が言葉になっているかどうかだけです。
もっと論理的に! 書く前に、自分に聞く5つ

どんな役割を演じさせたいか —「あなたは編集者です」の一行を加えてもいいし、文章にAIにやってもらう役割が伝わるようにすることで出力が変わります
どんな背景情報が必要か — 相手は前提を知りません。知らせるのは自分の仕事です
具体的なタスクは何か — 動詞ひとつに絞れているか
どんな制約を設けたいか — 字数・件数・使ってよい材料
最終的にどんな形式で欲しいか — 箇条書きか、表か、原稿か
この5つが埋まっていれば、だいたい通ります。返ってきたものが微妙だったときは、たいていこのどれかが抜けています。
資料は、一度に多く渡すほど精度が上がるわけではない

古い資料、無関係なファイル、長すぎる文章が混ざると、本来の目的と重要な条件のほうが見落とされます。
いまのタスクに必要で、信頼できて、最新のものだけを渡してください。心配な所を先に言っておくと、焦点が合います。
AIは「賢い子供」

数学は上手に解けます。お絵描きも上手で、文章作成も速い。けれど、あなたの基準、会社のルール、家庭の事情、業界の常識は知りません。
知らないことがあるから「迷走」が始まります。それを減らすには、どう説明すれば伝わるかを考えることです。
主観の命令から、客観の命令へ

「感じ方」の言葉を、「基準」の言葉に置き換えます。
「格好よくして」を「Instagramが使う配色にして」に。「いい感じにまとめて」を「A4一枚・見出し3つで」に。「もっとおしゃれに」を「箇条書き5つ・敬語で」に。
主観のままでは、何が「格好いい」のか基準がAIに伝わりません。基準が入ると、AIは意図を推敲しやすくなります。
私見:主観+客観が最強

最近私が思う、いちばんいい命令のかたちがこれです。
「デザインを格好よくして(たとえば、Instagramみたいなカラーバリエーションがいい)」
主観でゴールを、客観で基準を伝えています。こう言うと、AIに知見が溜まります。「あ! この人はInstagram風のデザインを格好いいと思う人なんだ」と、あなたの好みを覚えていく。
その後は「格好よくして」と主観だけで命令しても、望む形になる確率が高くなります。
使うほど、AIは少しずつあなたを覚える

あなたの好み、前提、言い回し。命令すればするほど、AIはそれを知見として溜めて参考にしてくれます。
だから、たくさん使う人ほど、少ない言葉でも望む形が返ってくるようになります。ただし——情報は、多く渡すほど良いわけではありません。
禁止形ではなく、実行形で書く

AIは基本、何かをする前提で生成します。だから「〜しないでください」は、何をすればいいかを伝えていません。
「長文で答えないでください」ではなく、「3行以内で答えてください」。禁止形はしてほしくないことしか伝えないので、残りの選択肢が全部残ってしまいます。実行形にすると、やることが1つに決まります。
今日いちばん簡単に試せる直しです。
AIとの話し方 まとめ

論理的・簡潔に命令
主観+客観を交えて命令
禁止型で命令しない
第3部 刻んで、確認する

一発で終わらせない

計画を見せてもらう —「全文を作る前に、計画や順序を教えて」
理解を言わせる —「作り始める前に、理解した内容を教えて」
作らせて、検証する — ここで初めて本体を作らせます
途中で一回止めれば、方向がズレていてもその時点で直せます。そして、期待通りにならなかった時こそチャンスです。AIが何をどう解釈したかを知る機会なので、そこを見て次の書き方を直していきます。
私見:覚えるべきは様式より、伝える技術

昔のAIでは手順を細かく書かないと動かなかった処理が、いまは書かなくても動きます。AI向けの小技は、モデルの進化に吸収されていきます。
残るのは、頭の中のイメージを言葉にする力のほうです。相手がAIでも人間でも変わりません。様式を覚えるより、ここに時間を使うほうが長持ちします。
結局、差がつくのは「意識して触った回数」

自転車と同じで、乗り方の本を10冊読むより、5分乗ってみるほうが早い。毎日5分、3ヶ月つづけた人から景色が変わります。
おわりに

大きな決意より、小さな一歩から。今日から意識して、AIを使ってみましょう。
次回予告:ClaudeやCodexを、スマホで使う

次回の勉強会、もしくはグループチャットでご紹介する予定です。外出先でスマホからでも、パソコンのように Claude Code や Codex が動きます。
